ブリッジ [映画]
★★★★★★★★★★
http://the-bridge-movie.com/ (ブリッジ 公式サイト)
「ブリッジ」。
恵比寿ガーデン・シネマにて観てまいりました。
ふむ。
とりあえず、今回はですね。
ご覧の通り↑、採点はやめておこうかなと、思います。
まぁ、別にドキュメンタリーだからといって特別扱いするつもりもないんですが、
どうも内容が内容だけに、ちょっとあまりいい気分もしませんからね…。
ですので、今回は本当にこの映画を観た”感想文”のようになるだろうし、
いつものように茶化して書くわけにもいかず、映画の内容同様、結構気の重い…。
そんなスタートになってしまったわけですけども。
”アメリカ西海岸、
サンフランシスコに架かる全長2,790m、高さ230mのゴールデンゲート・ブリッジ。
そこはサンフランシスコの観光名所であるとともに、
世界有数の”自殺の名所”でもある。
何故この美しい橋に自殺者が呼び寄せられるのか―?
2004年から2005年─
1年間にもわたり定点撮影を行い、橋から飛び降りる人々のその姿をカメラに捉え、
世界中で論争を巻き起こした”衝撃のドキュメンタリー”。”
そして、その実際に”飛び降り自殺”をして命を失くした方たちの、
友人、遺族の方にインタビューを行い、その模様も収められています。
「橋桁に足をかけた人を見かけたらすぐに通報する事をルールとして撮影した」
─監督:エリック・スティール
…という事なんだそうで、実際にそれで6人もの人の命を救ったんだとか。
しかし、逆に言えばわざわざこんな事を言わなければならないほど、
何人もの方の”自殺する一部始終”を克明に捉えてるんですね。
飛び降りる前、飛び降りる瞬間、飛び降りてから海面に落下するまで、を。
…で、正直言ってしまうと、ちょっと誤解を受けそうな言い方なんですが、
この映画を観終えた感想として、特には…
”凄く考えさせられた”…だとか”心に重く響いた”…だとか、
ましてや”感動した”なんてことは、ほとんど思わなかったんです。
もちろん、”自殺をする人”の映像はショッキングなのは当たり前ですけど。
しかし、この映画の大部分を占めるのは、
亡くなった方の友人・遺族の方の話なわけで、本人の話じゃないので。
…またこれ、おかしな事を言ってるようですが、
やっぱり、いくら他人が生前の故人の話をしたところで、
所詮、親兄弟と言えども本人じゃないわけで、
その本当の所は本人にしかわからないですし。
何故、自殺するまでに至ったのか、
何故、その橋を選んだのか、
何故、人通りの多い昼間を選んだのか、
何故、飛び降りるまでに時間をかけて、そして最後に何を考えていたのか。
当然、わかるはずのない事の方が多いですけど、
でも、本当に知りたい、知らなければいけないのはそちらの方だと思うんですね。
もし、何か日記なりなんなりの本人たちの言葉が残されていて、
そちらを基にこの映画も構成されていたなら、また違った見方もできただろうし、
より真に迫れて、より何かを理解できたんじゃないかな、と。
そんな風に思いました。
この映画に出てくる”自殺”を行った7人の人たちは、
ほとんど皆、鬱状態に悩まされその果てに”自殺”をしてしまったという事でした。
実を言うと、自分も過去にこのような状態に陥った事があります。
といっても、この7人の人たちや、
その他にも大勢いるであろう、この病気に悩まされている人たちに比べれば、
自分の体験したものはかなり軽度だったのかもしれませんが、
それでも、この病気がどういうものかという事くらいは少しは分かるつもりです。
”死への憧れ”みたいなものを抱いていた時期も実際にありましたしね。
いつ頃死のうか、どこでどうやって死ねばカッコいい死に方になるのか。
こんな事ばかり常に頭の中で考えてしまって、で、そうかと思うと一転、
何の根拠もなしに自分の未来は明るいはずだとか、楽しいはずだとか、
そんな事を考えるようにもなる。
今考えると、いわゆる躁鬱の状態だったんでしょうが、
病院等にかかったわけではないので断言はできません。
でも、期間も短く、恐らくはまだ軽い症状だったんだとしても、
それでもすんごくしんどかったのはよく覚えてます。
生きる事が。
何をしていてもつまらないし、何をしていても意味が無いし、
じゃぁ、何故そんな辛い思いをしてまで生きなければダメなんだろうか、と。
抽象的な表現で申し訳ないですが、
ほんと、太陽がずっと”雲”で覆われていて、世界は真っ暗闇にしか思えない。
そんな状態でした。
なので、この映画に出てくる7人の人たちの精神状態…
”空が雲に覆われた”状況が何年、何十年と続いたとしたら…と考えると、
非常に悲しくもあり、そして恐ろしくもなります…。
”自殺”という行為が果たして”良い事”なのか、”悪い事”なのか…
そして、それは誰にとって”良い事”で、誰にとって”悪い事”なのか。
この事は誰にも一概には言えないだろうし、本当に難しい問題だと思いますね。
で、この”自殺”…というより”死”と”人生”についてですかね。
これらの言葉を聞くと、どうしても頭に浮かんでくる本が2冊あるんですね。
でも実際、この本を読んだ時には、
もう既に”欝状態”から抜け出して何年か経っていたんですが、
それでも、まだ心の中には幾分か残っていた”雲”。
この”雲”を、この2冊の本が全て、完全に吹き飛ばしてくれた…
丁度、先頃台風が来てましたが、まさに”台風一過”のような…(笑)
そんな”雲ひとつない青空”のような心にしてくれた2冊の本がこちらなんです。
「1リットルの涙」 「いのちのハードル」
この作品については何度かこのブログでも取り上げたかと思うんですが、
何度でも取り上げましょう。
もう、そのくらいこの2冊の本は、
自分的な心の聖書(バイブル)として今も心に根付いています。
「1リットルの涙」は、
15歳という若さで”脊髄小脳変性症”という不治の病に冒され、
その病気と真正面から向き合って生きた木藤亜也さんの書いた日記です。
”脊髄小脳変性症”という病気については…
”脊髄小脳変性症とは、小脳、脳幹、脊髄が徐々に萎縮してしまう疾患であり、
原因は今もなお不明である。
箸がうまくもてない、よく転ぶといった症状から始まり、
進行するにつれて歩けなくなったり、字が書けなくなったりする。
最終的には言葉も話せなくなり、寝たきりになり、最悪の場合は死に至ることもある。
しかし、小脳、脳幹、脊髄が萎縮していっても大脳は正常に機能するため、
知能にはまったく障害がない。
つまり、体が不自由になっていく事を自分自身がはっきり認識できてしまうのである。
その意味でこの病気は非常に残酷な病である。”
(1リットルの涙 wikipediaより引用)
そして、もう1冊の「いのちのハードル」。
この本は亜也さんと共にこの病気と闘った亜也さんの母親、
木藤潮香さんが亜也さんの日記を基に綴った手記です。
で、この2冊の本を読んでいて…
お恥ずかしい事にずっと泣きながら読んでいたんですが、
どうしても、しばらくそのページから次のページへと行けなくなってしまう。
そんな箇所が何箇所かあったんですね。
涙で字が読めなくなるというか…(笑)
そんな箇所の中の一つに、
病気で体が思うように動かなくなって転んで歯が欠けて、
そんな自分の顔を見ると涙が出ると嘆いていた亜也さん。
そんな亜也さんが何気なく日記に書いた言葉、
「でも、シュークリームを食べたら凄く美味しくて嬉しかった」。
…ちょっと細かい部分は、今、本を手に取ってないので違うかもしれません。
でも、この言葉を読んで凄く気づかされた気がしたんですね。
ああ、こんな事でいいんだと。
人生ってこれでいいんだなって。
なんでこんな病気に侵されて、自分がこんな状況なのに、
なんでこんな些細な事で喜べるんだろうって不思議にすら思ったんですが、
でも、これでいいんだなっていう、凄く簡単な事のようですが思い知らされました。
何かを食べて、それが美味しいと感じれば、それでいいんじゃないかって。
そんな、自分が気づいてなかった、または忘れていた、
”人生ってどういうものか”という事を、この本を読んで凄く教えられた気がしました。
いや、本当にこの2冊の本に出会ってからはですね、
”生きる事への迷い”みたいな、そういうものが一切無くなったんですよね。
そら、もちろん生きてれば悩む事は多々ありますけど、
でも、それはマイナス方向への悩みじゃなくて、プラス方向への悩みで、
これは無理だとか、自分じゃどうしようもない…とかそんなんじゃなくて、
これをするにはどうすればいいのか、
自分にはあそこまではできない、行けないかもしれないけど、
でも、近づける方法はとりあえず探してみよう…とか。
そういう悩みしか持たなくなった…というより持てなくなりましたね。
というのはやっぱり、ちょっと悔しいというのもあるんですよ。
こんな15歳の少女(当時)がこれだけ頑張って生きてたのに、
自分はその五万分の一もまだ頑張ってないじゃないか、と。
そして、亜也さんの五万分の一もまだ人生を楽しめてないじゃないか、と。
もちろん、この病気に侵されて、この病気と戦った亜也さんは、
自分なんかより五万倍も辛い想いもされたんだと思いますけど、
それでも、”花”を見ても、”空”を見てもなんとも思わない自分よりかは、
よっぽど楽しくて素晴らしい人生を送ったんじゃないかと、思うんですね。
(いや、おいおいオレ、まだまだやな)…っていうね。
なんか、そんな風に感じたんです。
本が好きでいつも読んでいた亜也さんが、お友達から、
”「私が本を好きになったのは亜也ちゃんの影響よ」と言われて嬉しかった”
…という一節があるんですが、
ほんと、今自分が映画を観て楽しいと思えるのも亜也さんのお陰かもしれません(笑)
…と、かなり話がそれてしまいましたけど。
この映画「ブリッジ」に出てくる7人の方たち、そして、
それ以前にもこの橋で亡くなった方たちにも、こんなたった2冊の本のような…
そんな何か、人生の意味を教えてくれるものに出会えてたら、
また違った人生を送れていたのかな、なんて事を思わずにはいわれませんでした。
自分はまだ独身で、子供なんてものもいないんですけど、
もし将来、子供を持つようなことがあれば、
とりあえず、この2冊の本だけは読ませてあげたいんですね。
まぁ、もう、しばらくは算数が0点でも国語が12点でもええから、
とりあえず、これを読みなさい、と。
”あげたい”というのは、別に自分の自己満足のためじゃなくて、
その子供本人の為になるものだと思いますから。
それこそ、教科書10冊…
いえ、それ以上に人生に必要な何かを得られるんではないかと。
本当にそう思ってますので。
やっぱり、自分の子供には、
シュークリームを美味しいと思える子に育ってほしいですからね。
(その前にその子供がいないわけで、その前にまず結婚…ぶつぶつ…ぶつぶつ…)
というわけで、ドキュメンタリー映画「ブリッジ」の感想でございました。
…当初、この映画だけを鑑賞する予定だったんですが、
恵比寿ガーデン・シネマの方がですね
水曜日がなんとサービスデーで男女共に1,000円で映画を観られるという、
なんとも素晴らしいシステムなのを出かける前に知りましたので、
急遽、「アヒルと鴨とコインロッカー」もハシゴして観てまいりました。
なので、次回はその「アヒルと鴨とコインロッカー」について、
レブーをしてみたいなと思うところであります。
それでは、また(´・ω・`)ノシ
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コメント
Surさん こんにちは~♪
この作品、ウワサでは聞いてましたが、衝撃的な映画ですよね。
映画もさることながら、今作のSurさんのレビューが、しんみりとした中に心を揺さぶられるような文章だったので、今日もコメントさせていただきました。
実は、私も結婚する前に「うつ状態」だった時期がありまして。
死にたいと思いつめたこともありました。
そんな時に「映画」の素晴らしさに目覚めたんです!
なので私にとって映画は「命の恩人」かもしれません。
今は結婚もして子供もいて、Surさんの仰るように辛い事、嫌な事もあるけれど、この時のような精神状態にはならなくなりました。
今だから言えますが、こういうどん底の自分を経験して、人の痛みも分かるようになれた・・・そんな気がします。
長々とすみません。
Surさんも同じような思いをされたのだと知ってコメントせずにはいれませんでした。
その2冊の本、タイトルは知ってますがまだ未読です。
いつか読んでみたいです。
投稿: なぎさ | 2007年7月21日 (土) 16時13分
なぎささん、どうも~こんにちはー!
まず、
>長々とすみません。
いえいえ、もうなぎささんのお時間の許す限り、いくらでも何回でもコメントお寄せください(笑)
そうですか、なぎささんも「うつ状態」を経験されたんですね。
うーん、本当にあれは今になれば欝”病”という病気だったと思えるんですけど、それを本人が自覚できないんですよね、その時には。
もう、自分の”人生”はこういうものだと思い込んでしまう。なので”死”という言葉が出てきてしまうんだと思うんですが…。
でも、ほんっとうに辛いですよね…。程度の差はあれ、こういう経験を持つ人って意外に多いのかな…人には言えないだけで。
>映画が「命の恩人」
いいですね!何かこういうのめり込むものができると、立ち直れるというのは凄く分かります。
そして、なぎささんにはご家族、お子さんという目に見える”生きる意味”というものもできて(笑)ほんと、羨ましい限りです(*´Д`*)
>人の痛みも分かるよに
これもねぇ、凄く分かる気がします。なにか、人の事を許せるようになると言いますか、ね。
でも、未だに自分は(…分かってるつもりなんだけど)っていう事も多い未熟者です(汗)
>2冊の本
ほんと、これも是非お時間があれば読んでみてください。
…ちなみに、もし読まれるなら連休のときとかじゃないと目が凄い事になるかもしれませんので、ご注意を…(笑)
自分なんて、”犯罪者”みたいな顔になってましたからね。(目が腫れすぎて)
投稿: Sur | 2007年7月21日 (土) 18時38分