アヒルと鴨のコインロッカー [映画]
★★★★★★★★☆☆
http://www.ahiru-kamo.jp/ (アヒルと鴨のコインロッカー 公式サイト)
「アヒルと鴨のコインロッカー」。
恵比寿ガーデン・シネマにてハシゴ観賞してまいりました。
…で、前回の「ブリッジ」の記事の最後でこの作品の事を、
「アヒルと鴨とコインロッカー」って書いちゃいましたけど、”の”でしたね(汗)
こりゃ失敬をば。
とりあえず、それはさておき、この作品。
いやはや、ついでに観たと言うには余りにも惜しい、
そんな、中々の良作でございましたよ、これ。
正直、あまり期待してなかっただけに、ちょっと嬉しいですよね。
なにげに観て面白い映画だったりすると。
しかも、サービスデーだったので1,000円で観れたとなると、
またお得感もヒトシオでございました♪(*´Д`*)
で、今回はちょっとあれです、結構ストーリーがモノを言う作品だけに、
極力ネタばれは無しにしよう、という方向で行こうかな、と。
思いますです。
”19歳の椎名(濱田岳)は大学入学で一人暮らしをするために、
仙台のアパートへと引っ越してきた。
しかしその日、椎名は奇妙な隣人・河崎(瑛太)に出会う。
彼は初対面だというのにいきなり椎名に対し、
「一緒に本屋を襲わないか?」と持ち掛けてきた。
彼の標的はたった一冊の”広辞苑”。
そして彼は2年前に起こった、
彼の元カノの琴美(関めぐみ)と椎名の部屋の隣に住むブータン人留学生、
そして、美人ペットショップ店長・麗子(大塚寧々)にまつわる出来事を語りだす。
過去の物語と現在の物語が交錯する中、
すべてが明らかになった時、椎名が見た”奇妙で切ない真実”とは…。”
こんな物語でございます。
この物語がですね、
元々は伊坂幸太郎さんという作家さんの小説らしいんですが、
公式サイトにある、伊坂さんとこの映画の監督中村義洋さんの対談を読むと、
その原作者の伊坂さんでさえも「こんなに良い話だっけ(笑)」と驚くほど、
凄くよく出来た脚本なんですね。
原作は読んでないので、どの辺がどう変わってるのかとか、
どれがお互いにオリジナルの部分なのか、というのは分からないんですが、
↑のちょっとしたあらすじだけでも凄いたくさんの伏線が隠されているんです。
もちろん、その他にも色んな伏線が随所にちりばめられていて、
その伏線が最初は当然1本に繋がってはなく、果ては物語の全容すら中々掴めない。
しかし、その線が物語が進むにつれ徐々に1本に繋がっていく”面白さ”と、
そして、その物語の全容が分かった時に感じるなんとも言えない”切なさ”。
これが、この映画の醍醐味なのではないかと。
思います。
いや、でもほんと、これがねぇ、すんごく良かったんだよねぇ。
脚本しかりキャストしかり音楽しかり。
そう、今回”ボブ・ディラン”が凄く重要なキーワードになってるんだよね。
劇場に入ったときにボブ・ディランの”風に吹かれて”が流れてて、
その時は、ただ映画館側が待ち時間の間に流してる曲…っていう意識しかなくて、
でも、上映が開始されて、劇中でもその”風に吹かれて”が流れてくる。
凄い粋な演出だと思ったよね。
そして、今回この↑関めぐみちゃん演じる”琴美”も、
この物語の中で凄く重要なキーパーソンなんだよね。
で、そのなんていうのか、この”琴美”という役柄のせいなのか、
もしくはこの関めぐみちゃんが本来持ち合わせている女優としての魅力なのか、
なんか、凄く愛おしく思えたんだよね、今回この子が。
ああ、でもこの子だけじゃなくて、他の出演者にも言えるね、それは。
正直、今まであんまり好きでもなかった役者さんばかりなんだけど…
だから、あんまり期待もしてなかったわけなんだけど。
でも、今回凄くみんな愛おしく思えたよね、なんか凄く。
で、やっぱりね。
ネタばれしないと感想って書きにくいなっていう、ね。
あるね、なんかそういうのね。
やっぱり、ネタばれさせてください(´д`)テッヘッヘ
※超弩級のネタばれしてます!ご注意ください!_(._.)_※
やっぱり、その伏線なんですよね。
面白いとこって。
もう、それこそ冒頭での”椎名と河崎の出会い”にしたってそうだし、
椎名の部屋の隣に住む”ブータン人の留学生”にしたってそうだし、
バス停で困って助けを求めても無視される”外国人”だってそうだし
”河崎”が妙に抑揚のない喋り方をするのにしたってそうだし、
そして、もう”河崎”自体がそうだし。
…っていう、なんか本当に伏線とは思えない伏線が繋がる面白さと言いますか。
まぁ、その伏線だと思えなくする手法がうまいんだと思うんですけど。
で、その一番のサプライズというか、まんまと騙されたというか(笑)
そこがやっぱり、”河崎”が”河崎”じゃなかったという部分ですよねぇ。
”河崎”が言う、自分の部屋から見て”隣の隣”に住む男…
椎名の部屋からは向かって左側の部屋に住む、
”河崎”がブータン人だと言っていた男。(椎名がそう思い込んでいただけ?)
この男が、実はブータン人でもなんでもなくただの山形弁を喋る日本人。
で、その椎名の部屋の右隣に住む”河崎”…
その”河崎”の部屋から”隣の隣”(つまり河崎の部屋)に住む男”河崎”こそが、
実は琴美の最愛の彼氏であるブータン人留学生ドルジであると。
そして、その事が椎名にばれ”河崎”ことドルジが過去に起こった事件…
琴美の死の真相を話し始めて、ようやく伏線が繋がり物語の全容が分かる。
こういう事なんですね。
では、何故その山形人をブータン人だと思い込まされたかというと、
それが、凄く自然なカタコトなんですよ。(なんか変な表現ですが)
いや、自分も最初は(ん~どう見ても日本人でしょ)って思いましたよ。
でも、序盤のストーリーのほとんどがですね、
その”河崎”の語る過去の回想シーンで話が展開するんですが、
そこに出てくるそのブータン人(山形人)役の田村圭生さん。
この人の、あまりの見事なカタコトぶりにまんまと騙されてしまいましたね(;´д⊂)
(ああ、やっぱりブータン人なのか)って。
それに、この人がブータン人なのかどうかなんて、
ストーリー上さほど重要だなんて思いませんしね…(笑)
で、さっき公式サイトで見たら、この方アメリカの出身なんだそうで。
なるほどねぇ。
だから自然なカタコトなのね。
でも、自分は知らなかったから良かったですけど、
この人が普通に日本語を喋れる事を観客に知られてしまっていたら
このトリックは意味をなさないわけですし、そう考えると結構危険な賭けですよね。
というか、このネタばれを読んでしまっていてもダメなんですけど(爆)
まぁ、とにかくですね、ここはちょっとやられちゃいましたね。
で、そうなると”河崎”って一体誰なのよって話になるんですが、
そこはまぁ、伏せておくことにしますかね(´д`)(中途半端に伏せる悪い癖)
ああ、そうそう一つだけ疑問というか分からない箇所があったんですが。
このドルジがですね、
文字が読めないんじゃないかというクダリなんですけど。
ここがどうしても腑に落ちないというか、読めないわけがないと思うんですよねぇ。
そもそも、
日本に留学してこようというくらいなんだから文字くらい勉強してくるだろうし、
椎名と出会う頃には既に来日して2年近く経っていて、
それこそ喋ってるだけなら日本人として通用するくらい日本語にも精通している。
しかし、その過程で文字だけを覚えないなんてことはありえませんよね。
実際に回想シーンなんかでは教科書か参考書か分かりませんが、
それを開いて勉強しているシーンもあったし。
でも、なんか最後の方にですね、ぼそっとこのドルジが、
「文字が読めないわけじゃないんだよ…」
みたいな事を言った様な気がしたんですが…。
じゃぁ、やっぱり読めるの?ってことになってきますが、
そうするとさらにワケが分からなくなってしまうシーンがあるんですよね…。
というのが、
椎名が”河崎(ドルジ)”はひょっとして文字が読めないんじゃないか?と疑う。
その”河崎”の事を試す為に、参考書(?)を”河崎”の元へ持っていき、
「これ、ボブ・ディランの詩集なんだけど読む?」と言って”河崎”に手渡す。
すると、”河崎”は…ちょっと正確な台詞は忘れてしまいましたが、
「へ~そうなんだ、あれも入ってんの?」的な事を言って気づかない。
そこで椎名は”河崎”が文字を読めない事を知り、”河崎”の告白が始まる。
…という流れなんですけど、そこでもし仮に文字が読めるんだとすると、
この部分が変なことになってくるんですよね…。
ていうか、そもそも参考書とボブ・ディランの詩集なんて、
表紙の絵とか見れば違うことくらいわかりそうなもんですから…(笑)
う~ん、あそこだけがほんとわかんないんですよねぇ…。
ドルジはわざと気づかないフリをしたってことなんですかね…?
でも、そんな風な描写には見えなかったけどなぁ…?(´・ω・`)ウーン
まぁ、そこのところはさておきにして。
この「アヒルと鴨のコインロッカー」、
面白くもあり切なくもある、そんな非常に良い部類の邦画だと思いますので、
是非お近くで上映されてるならば、早いうちに劇場へGOしてみては如何でしょうか!
というわけで、「アヒルと鴨のコインロッカー」。
★8個で!!
…ところで、この恵比寿ガーデン・シネマという劇場。
実はこの時初めて足を運んだんですけど、凄く雰囲気のいい映画館ですねぇ。
つくりはコジンマリしてるんですけど、こう映画館によくある、
”暗くて、怪しくて、闇取引でもしてそうな”イメージ。(言いすぎ)
そういうものがなくてですね、どこかこう、
”柔らかな日の光が差し込む、暖かな映像空間”みたいな。(劇的ビフォーアフター風)
なんかそういった感じがして、個人的に凄くお気に入りの映画館になりました。
あと、なにが良いって、周りの環境ね。
恵比寿ガーデン・プレイスというんですか、あの辺は。
もう、まさに”都会のオアシス”といった感じで落ち着いた雰囲気の…
うーん、あそこに住みたい(´д`)
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コメント
こんにちは!
この作品が面白かったんで、伊坂幸太郎の原作がどのように文章化されてるのか気になり、読んでみました。おもしろかったです!
彼の作品はどんどん映画化になっていくので、今後も注目ですね。
投稿: カオリ | 2007年7月26日 (木) 11時30分
カオリさん、ありがとうございます~!
原作読まれたんですかー。ほんと、元はどういう風になってるのかは気になりますねぇ。どっかで、この企画があがった当初は映像化は無理だなんて言われたと見ましたが…いやはや、素晴らしい出来でよかったよかった('∇')
なるほどぉ、どんどん映画化されますか!
是非、他の作品も映画で観てみたいですね!
投稿: Sur | 2007年7月27日 (金) 07時31分
(〃⌒ー⌒)/どもっ♪
いつもトラバさせていただいております~。
この度はトラバ&コメありがとうございました!
どうやらこの映画仕掛けがあるんだって~との情報を入れてからの
鑑賞だったのであたしは結構早い段階で気付いてしまったのですが、
それでも面白い映画でしたね~。
何と言ってもキャスティングが絶妙でしたよね。
投稿: miyu | 2007年7月29日 (日) 23時06分
miyuさん、ありがとうございます~(*´Д`*)
そうでうすか、事前に情報を得てご覧になったんですね。自分はその全く逆で、どういう映画かも、サスペンスモノ(?)とも知らずに観たので余計に意外性があって楽しめましたねぇ。
ほんと、キャスティングも皆さんハマリ役でしたね!
あと、これの他にもたくさんTB送ってくださって…ほんとありがとうございます!
これからも是非よろしくお願いしますね!_(._.)_
投稿: Sur | 2007年7月30日 (月) 06時52分
こんにちは~
私は原作から入った口です。
これはかなりぐっとくる小説なので、是非オススメです。
原作と違うところは、バス停のシーンですね。これは麗子さんが、外国人にも親切という設定になっていましたが、原作では痴漢をしたやくざを撃退する勇ましい女性になっています。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2007年9月12日 (水) 00時35分
ノルウェーまだ~むさん、
はじめまして、こんにちは~!
そうですかぁ、原作からでしたか~。
そう、小説もいいみたいですねぇ、色々なところで好評なのは見てました(笑)
自分は原作を見ずに映画を観たので、その分驚きも大きかったですけど、
原作を見てから映画を観るのも、また違った驚きがあって面白そうですねぇ。
>バス停
なるほどなるほど。貴重な情報ありがとうございます_(._.)_
映画のほうでは外国人~のクダリも伏線になってたと思うんですが、
小説の方の痴漢~もまた何か意味があるんですかねぇ?
ちょっと気になるわん(´・ω・`)
投稿: Sur | 2007年9月12日 (水) 09時53分
バス停のくだりは、麗子さんが‘悪者は許すマジ!‘という毅然とした女性であるという象徴になっているのです。
実際、原作では外国人に対する偏見という点は、あまり強調されていないんですよね。
どちらかというと、麗子さんの凛々しい様子が、前編を引き締めているのです。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2007年9月12日 (水) 15時51分
ノルウェーまだ~むさん、
早速のご返答ありがとうございます!_(._.)_
なるほどなるほど、そういう事ですかぁ。
へぇ、小説では偏見~にはあまり触れられていないんですねぇ。
個人的には、その辺にもちょっとウルッと来たもんで、ちょっと意外な感じもしますが。
そこは映画化に際しての”改良点”と捉えてもいいのかな?なんて。
投稿: Sur | 2007年9月12日 (水) 20時06分
「文字が読めないわけじゃないんだよ…」
じゃなくて
「読めないとは言えない」と言ってました。
つまり文字が読めないことを知られると外国人だとばれてしまうという意味じゃないですか。
投稿: 「文字が読めないわけじゃないんだよ…」 | 2009年3月25日 (水) 19時15分